拡張機能開発の注意点
API からは読み取りにくく、拡張機能の作者が実際につまずいた動作をまとめたページです。Beutl 本体で直すべきものには、対応する Issue へのリンクを付けています。内容は Beutl 2.0.0-preview.8 で確認しています。
パッケージと読み込み
ソースジェネレーターがパッケージの依存関係に入る
Beutl.Extensibility.Sdk 2.0.0-preview.8 以前は、DebugApplication 以外のビルドで、Beutl.Engine.SourceGenerators への参照に PrivateAssets="all" を付けません。そのため dotnet pack で作ったパッケージの依存関係に、ジェネレーターが含まれます。Beutl はインストール時にこの依存を解決できず、Unable to resolve dependency 'Beutl.Engine.SourceGenerators' というエラーでインストールに失敗します。
自動参照を切り、自分で参照を追加してください。$(BeutlPackagesVersion) は SDK が参照する Beutl のパッケージのバージョンなので、ジェネレーターも常に同じバージョンになります。
<PropertyGroup>
<BeutlAutoReferenceSourceGenerators>false</BeutlAutoReferenceSourceGenerators>
</PropertyGroup>
<ItemGroup>
<PackageReference Include="Beutl.Engine.SourceGenerators"
OutputItemType="Analyzer"
ReferenceOutputAssembly="false"
Version="$(BeutlPackagesVersion)"
PrivateAssets="all" />
</ItemGroup>
.nupkg の中の .nuspec を開き、依存関係が Beutl のパッケージだけになっていることを確かめてください。SDK の修正は b-editor/beutl#2727、この依存を含んだまま公開済みのパッケージへの対応は b-editor/beutl#2730 で扱っています。
Beutl が同梱しているライブラリ
拡張機能はそれぞれ専用の AssemblyLoadContext に読み込まれます。ただし、同じ名前のアセンブリを Beutl が同じかより新しいバージョンで同梱している場合は、Beutl のものが使われます。そのようなライブラリ(たとえば FluentIcons)を使うときは、次の 2 点に注意してください。
- Beutl の
Directory.Packages.propsにあるバージョンと同じものを参照します。より新しいバージョンを要求すると、拡張機能のコピーが別に読み込まれ、Beutl の型と一致しなくなります。 ExcludeAssets="runtime;native" PrivateAssets="all"で、実行時の資産とネイティブの資産を除外します。ExcludeAssets="runtime"だけでは、推移的に入る libSkiaSharp や HarfBuzz などのネイティブライブラリが、出力先のruntimesフォルダーにコピーされます。
<PackageReference Include="FluentIcons.Avalonia.Fluent"
Version="2.1.343"
ExcludeAssets="runtime;native"
PrivateAssets="all" />
ビルド後、出力先の <AssemblyName>.deps.json に載っているのが、自分のアセンブリと Beutl が同梱していないライブラリだけであることを確かめてください。これらのライブラリをもっと簡単に参照する方法は b-editor/beutl#2733 で扱っています。
読み込みは全部成功するか、全部取り消されるか
- Beutl は、アセンブリの public な型から拡張機能を探します。拡張機能のクラスは
publicで、Extensionを継承し、[Export]属性と引数なしのコンストラクターを持つ必要があります。 - Beutl は public な型を厳密に読み込みます。そのうち 1 つでも読み込めないアセンブリを参照していると(除外したのに Beutl が同梱していないライブラリなど)、パッケージ全体の読み込みに失敗します。
- ある拡張機能の
Load()が例外を投げると、同じパッケージの拡張機能はすべて取り消されます。
サイドロード
DebugApplication のビルドは ~/.beutl/sideloads/<AssemblyName> に出力されます。Beutl が読み込むのは、フォルダーと同じ名前の DLL があるフォルダー(<名前>/<名前>.dll)だけです。自分でファイルをコピーする場合も、この名前のそろえ方を守ってください。
バージョン番号とアイコン
0.1.0のような正式版のバージョンで Beutl のプレビュー版パッケージに依存すると、dotnet packが警告 NU5104 を出します。Beutl のプレビュー版を対象にしている間は、0.1.0-preview.1のようなプレリリースのバージョンを使ってください。PackageIconで設定されるのは.nupkgの中のアイコンです。ストアのページのアイコンは、開発者ページから別にアップロードします(拡張機能を公開するを参照)。画像は角を丸めない正方形にしてください。表示するときに、ストアと Beutl が角を丸めます。
保存と編集
IEnumerable を実装した値では [JsonConverter] が使われない
Beutl のシリアライザーは、値を System.Text.Json に渡す前に IEnumerable かどうかを調べます。保存では、値が IEnumerable を実装していると要素を 1 つずつ書き出し、型に付けた [JsonConverter] は使いません。読み込みでは、IEnumerable<T> を実装した型に JSON の配列を読み込むとき、要素を 1 つずつ読み、その型の新しいインスタンスに入れます。うまくいくのは配列と、引数なしのコンストラクターを持つ IList の型だけです。それ以外の型は null として読み込まれるか、読み込みが例外で失敗します。
プロパティに保存する値の型には IEnumerable を実装せず、Items のようなプロパティで要素を公開してください。b-editor/beutl#2728 で扱っています。
[JsonConverter(typeof(CommentListConverter))]
public sealed class CommentList // IEnumerable<Comment> は実装しない
{
public IReadOnlyList<Comment> Items { get; }
}
時間で変わる内容と分割
ユーザーが要素を分割すると、Beutl は要素をコピーし、前半と後半のオブジェクトの ISplittable.NotifySplitted を呼びます。コメントや歌詞、口パクのように、自分の時間軸で内容を再生するオブジェクトは、SourceVideo や SourceSound と同じく、後半で時刻をずらしてください。ずらさないと、後半が最初から再生し直されます。
public sealed partial class MyDrawable : Drawable, ISplittable
{
// 内容の時刻は、要素の先頭からの時間からこの値を引いたもの。
public IProperty<TimeSpan> TimeOffset { get; } = Property.Create(TimeSpan.Zero);
public void NotifySplitted(bool backward, TimeSpan startDelta, TimeSpan durationDelta)
{
// 後半は startDelta だけ遅く始まるので、内容をその分だけ戻す。
if (backward)
TimeOffset.CurrentValue -= startDelta;
}
}
保存するがパネルに出さない値
EngineObject の protected メソッド HideProperties(...) を使うと、プロパティをプロパティパネルに表示しないようにできます。保存・元に戻す・コピーの対象には残るので、独自のエディタで設定する値に使えます。
複数の変更を 1 回の「元に戻す」にまとめる
プロパティエディタは、IPropertyEditorContext.Accept に渡される visitor から HistoryManager を受け取れます。プロパティを変更してから Commit を 1 回呼ぶと、ユーザーは 1 回の操作でまとめて元に戻せます。
public void Accept(IPropertyEditorContextVisitor visitor)
{
visitor.Visit(this);
if (visitor is IServiceProvider services)
_history = services.GetService(typeof(HistoryManager)) as HistoryManager;
}
private void Assign(MyDrawable drawable, string path)
{
drawable.MouthOpen.CurrentValue = path;
drawable.MouthClosed.CurrentValue = "";
_history?.Commit("口のレイヤーを割り当て");
}
エディタとの連携
タイムラインに追加できないライブラリ項目
GroupLibraryItem.AddDrawable<T>() と AddSound<T>() が登録するのは Drawable か Sound の形式だけです。一方、タイムラインが受け付けるのは EngineObject の形式を持つ項目です。そのため、これらの項目はライブラリと検索には表示されますが、タイムラインにドラッグしても何も起きません。両方の形式を登録する AddMultiple と BindDrawable<T>()・BindSound<T>() で登録してください。b-editor/beutl#2729 で扱っています。
LibraryService.Current.RegisterGroup("My Extension", group => group
.AddMultiple("My Shape", item => item.BindDrawable<MyShape>()));
テストでは、LibraryService.Current.GetTypesFromFormat(KnownLibraryItemFormats.EngineObject) に自分の型が含まれることで確認できます。
再生中の再生位置
再生中の IEditorClock.CurrentTime は、描画済みのフレームを表示したときにだけ進みます。フレーム単位でしか動かず、描画が重いと音声より遅れたり止まったりします。再生に合わせて入力の時刻を計る場合は使わず、IPreviewPlayer.IsPlaying が true になってからの経過時間で計ってください。
再生を開始する公開メソッドはありません。エディタの PlayPause コマンドを実行してください(エディタのコンテキストが IContextCommandHandler を実装しています)。コマンドは再生と停止を切り替えるので、先に IsPlaying を確かめます。停止は IPreviewPlayer.Pause() で行います。拡張機能向けの再生 API は b-editor/beutl#2731 で扱っています。
if (editorContext is IContextCommandHandler commands && !player.IsPlaying.Value)
await commands.ExecuteAsync(new ContextCommandExecution("PlayPause"));
ツールタブ
Headerがnullを返すToolTabExtensionは、タブを追加するメニューに表示されません。自分の UI からIEditorContext.OpenToolTabで開いてください。OpenToolTabは、同じタブがすでに開いていれば、新しく開かずにそのタブを前面に出します。開いているタブを使い回すにはFindToolTab<T>()を使います。
UI
Beutl.Controls は使えない
Beutl.Controls はパッケージとして公開されていないため、ToolTabBar などのコントロールを参照できません。Beutl と同じ見た目にするには、実行時に Beutl が提供するテーマのリソースから作り直してください。リソースは GetResourceObservable でバインドすると、別のテーマを使うテストなど、リソースがない環境でも動きます。
var bar = new Border
{
MinHeight = 38,
Padding = new Thickness(4, 2),
BorderThickness = new Thickness(0, 0, 0, 1),
};
bar.Bind(Border.BorderBrushProperty, bar.GetResourceObservable("DividerStrokeColorDefaultBrush"));
var add = new Button { Content = new FluentIcon { Icon = Icon.Add, FontSize = 16 } };
add.Bind(StyledElement.ThemeProperty, add.GetResourceObservable("ToolTabBarIconButtonTheme"));
ツールタブでよく使うのは、ToolTabBarIconButtonTheme、LiteComboBoxStyle、DividerStrokeColorDefaultBrush、TextFillColorSecondaryBrush と、options-group スタイルクラスです。どれも公開 API ではなく、変わる可能性があります。b-editor/beutl#2732 で扱っています。
プロパティエディタの余白
プロパティエディタには左右に 4 px の余白があり、さらにヘッダーと値の周りに 4 px の余白があります。ヘッダーを上に置き、値を横幅いっぱいに表示するエディタも、同じ余白にすると他の行とそろいます。Beutl の GradientStopsEditor がこの形です。
CheckBox と RadioButton の Padding
CheckBox や RadioButton の Padding を変える場合は、VerticalContentAlignment も Center にしてください。FluentAvalonia のラジオボタンは、ラベルを上に寄せ、上に 6 px の余白を取って記号の位置に合わせています。この余白を消すと、ラベルが記号より上にずれます。
ヘッドレスでのスクリーンショット
Avalonia.Headless と Beutl のテーマで UI を描画するのは便利ですが、結果がアプリと同じになるとは限りません。たとえば、ラジオボタンのラベルのずれはヘッドレスでは再現しませんでした。公開する前に、Beutl 本体でレイアウトを確かめてください。
テキストと画素の描画
context.DrawText(text, fill, pen)が縁取りを描くのは、FormattedText.Penが設定されているときだけです。引数の pen だけでは縁取りは描かれません。FormattedText.Boundsは文字のインクの範囲で、行の高さではありません。行の高さは負の値のMetrics.AscentとMetrics.Descentから求め、ベースラインをtop - Ascentに置いてください。- macOS の既定のフォントファミリーは Helvetica で、日本語の幅をかなり狭く測ります。
FontManager.Instance.IsRegisteredで確かめたうえで "Noto Sans JP" を使うなど、文字に合うフォントを選んでください。 Bgra8888のコンストラクターの引数は(r, g, b, a)の順です。フィールドは B、G、R、A の順に並んでいます。- SkiaSharp の
SKColors.Transparentは透明な白(0x00FFFFFF)です。何も描かれていない画素はSKColors.Emptyなので、何も描かれていないことを確かめるときはアルファ値を調べてください。